心臓は通常、右心房にある「洞結節」という天然のペースメーカーが規則正しい電気信号を放ち、1分間に60〜100回のペースでポンプ運動を繰り返しています。しかし発作性上室頻拍を発症している心臓では、心室より上の部分(心房や房室結節の周辺)に生まれつき、あるいは後天的に余分な電気の通り道(副伝導路や遅延伝導路)が存在しています。
突然激しい動悸が巻き起こる理由は、日常的に誰にでも起こる「期外収縮(脈の単発の乱れ)」が引き金となり、この余分な伝導路と正規のルートとの間で電気が輪を描くようにグルグルと猛スピードで空回りし始めるためです。これを循環器内科では「リエントリー」と呼びます。リエントリー回路を電気が周回するたびに心室へ収縮指令が送られるため、突如として毎分150〜220回もの猛烈な頻拍状態へ突入する仕組みです。
発作性上室頻拍は、電気の旋回ルートによって主に以下の3つのタイプに分類されます。
- 房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT):全体の約6割を占める最も多いタイプ。房室結節の中に「速い伝導路」と「遅い伝導路」が併存し、その間で電気が旋回する。20代〜40代の女性に好発する傾向がある。
- 房室回帰性頻拍(AVRT):全体の約3割を占めるタイプ。生まれつき心房と心室の間に「ケント束」と呼ばれる異常な筋肉の線維(副伝導路)がつながっており、ここを電気が逆流・周回する。いわゆる「WPW症候群」に伴って生じることが多い。
- 心房頻拍(AT):心房の特定部位から異常な高頻度の電気信号が自律的に連射されるタイプ。
「靴ひもを結ぼうと前かがみになった瞬間」「寝返りを打った瞬間」「深呼吸をした瞬間」など、特定の体勢変化や腹圧の上昇が発作の直接的な誘因となるケースが臨床現場で頻繁に報告されています。さらに、睡眠不足、過労、アルコールや多量のカフェイン摂取、精神的ストレスなどは期外収縮を誘発しやすくするため、回路のスイッチを入れる間接的な原因として作用します。