昭和50年代初頭、日本ビクターが開発したVHSとソニーのベータマックスによる「規格争い」が繰り広げられる中、一般家庭における昭和ビデオデッキ普及の経緯には、公には語られにくい強烈な起爆剤が存在していました。それが、ハードの性能を限界まで味わいたいというユーザー心理と結びついた「裏ビデオ」の存在です。
当時、数十万円もした高価なビデオデッキを購入する動機として、テレビ番組の録画だけでなく「自宅の密室で誰にも邪魔されずに禁断の映像を観る」という個人的な視聴環境の獲得がありました。1970年代に猛威を振るった「ビニール本(ビニ本)」が警察の摘発強化で姿を消していくタイミングと重なり、アングラカルチャーの主役は紙媒体から磁気テープという動く映像メディアへと急速にシフトしていったのです。
80年代裏ビデオの背景には、単なる成人向けコンテンツの需要にとどまらず、技術革新がもたらした「個人メディアの夜明け」という側面がありました。複製が容易なVHSテープの特性は、密造とダビングを加速させ、法規制が追いつかない爆発的な市場拡大を招くことになります。