NHK東京放送劇団の5期生として入団した直後、彼女は周囲との圧倒的なギャップに苦しんでいた。周りが洗練された声を発する中で、彼女の発話スピードや独特の間合いは「番組のテンポを崩す」と見なされた。通行人役や大声で叫ぶだけのモブ役すら降ろされ、「あなたには役がつかない」と通告された衝撃は計り知れなかった。
だが、彼女はスタジオの隅でリハーサルを食い入るように見つめ続けた。監督や先輩俳優が発する一言一句、カメラワークの動きを皮膚感覚で吸収する日々。自分を殺すのではなく、自分の個性が活きる「場所」を模索し続けた執念が、徐々に現場のスタッフたちの意識を変えていくこととなる。