なぜ白子町のコート群はここまで強固に「宿泊優先」を貫いているのでしょうか。その深層にある白子テニスコート宿泊者専用理由を紐解くには、昭和から平成、そして現在へと受け継がれてきた地域特有の経済モデルを理解する必要があります。
白子町の中里海岸周辺は、もともと地引き網や農業を中心とした静かな港町でした。高度経済成長期以降、観光地としての生き残りをかけ、民宿街が一致団結して推進したのが「テニスツーリズム」でした。各宿泊施設が私財を投じて農地や空き地をテニスコートへ転換し、1軒では賄いきれない大規模大会を受け入れるために複数軒でコートを融通し合う「共同コート組合」を組織した歴史があります。
つまり、白子町のテニスコートは「公的なインフラ」として作られたのではなく、「民宿の客室を満室にするための付帯設備」として整備されたという原点があります。ホテルや民宿側から見れば、コート貸出単体による数百円〜数千円の収益よりも、1人1泊2食で数千円〜1万円以上の消費を生む宿泊パックでなければ、広大なオムニコートの張り替えやブラッシング、照明維持といった高額なメンテナンス費用を回収できない構造になっているのです。
この地域経済の循環システムを理解すると、日帰りビジター利用が制限される理由が明確になります。白子のコートは、宿泊と結びつくことで初めて成立するサステナブルな民間インフラなのです。