会社宛てに催促メールを送信しても返信がない、あるいは意図的な嫌がらせで発行を拒まれている場合、もはや元の職場と直接やり取りを続ける必要はありません。労働者には、行政機関を通じて自らの権利を守る強力な救済ルートが法的に用意されています。それがハローワークによる「ハローワーク職権交付」と「失業保険仮手続き」です。
退職後、会社に請求しても離職票が発行されない場合、退職者は居住地を管轄するハローワークの雇用保険窓口へ直接赴き、「雇用保険の被保険者でなくなったことの確認の請求」(雇用保険法第8条)を行うことができます。この請求を受理したハローワークは、行政の権限に基づいて事業主に対し、速やかに離職証明書を提出するよう正式な督促を行います。
それでも会社が応じない、あるいは経営者と連絡がつかない場合、ハローワークは行政独自の調査権限を発動し、事業主の承諾なしに直接「離職票」を発行する「職権交付」に踏み切ります。窓口へ相談に行く際は、自力での手続きを迅速化するため、以下の客観的証拠を持参してください。
- 退職の事実を証明する資料:退職届のコピー(内容証明郵便の受領証やメール送信履歴)、退職承諾書、解雇通知書、社会保険資格喪失証明書など
- 賃金の支払実績を証明する資料:直近6か月分以上の給与明細書、源泉徴収票、給与振込が記帳された銀行通帳など
- 本人確認書類:マイナンバーカード、運転免許証、印鑑など
さらに極めて重要な救済策が、離職票もらえない失業保険手続きの切り札である「失業保険仮手続き」です。原則として失業保険の申請には離職票の提出が必須ですが、退職から一定期間(目安として退職後1か月、あるいは会社が発行を拒んでいる明確な証拠がある場合)が経過していれば、離職票が未着のままでも受給資格決定の仮手続きを受付してくれる特例運用が存在します。
この仮手続きを行う最大の利点は、失業保険の支給開始要件である「7日間の待期期間」の消化を前倒しできる点にあります。会社からの離職票を何週間も待ってからようやく申請していては、受給開始時期が大幅に後ろ倒しになり、最悪の場合は受給期間満了日(退職翌日から1年間)に引っかかり満額受給できなくなる恐れがあります。仮手続きを行っておけば、ハローワークが会社への督促や職権交付の手続きを進めている間に待期期間が満了し、離職票が正式に発効した瞬間に給付金が口座へ振り込まれる体制を整えることが可能です。
なお、相談先として労働基準監督署相談を検討する退職者も少なくありませんが、管轄の違いに注意してください。労働基準法第22条に基づく「退職時等の証明書」の発行拒絶については労基署の指導対象となりますが、離職票そのものは雇用保険法(厚生労働省職業安定局・ハローワーク)の管轄です。早期の失業給付を求めるならば、労基署ではなくハローワークの「雇用保険給付課(適用課)」へ直行することが最短ルートとなります。