ファンの間で今なお語り継がれる最大のミステリーが、連載開始号の前号(1969年11月号)に掲載された連載予告カットの謎です。
新連載を告知する誌面には「新連載!」「おもしろいよ!」という惹句とともに、机の引き出しが開いて光が溢れ出るイラストが描かれていました。しかし、肝心の主人公・ドラえもんの姿や名前はどこにも存在しなかったのです。読者を引きつけるための高度なティザー広告だったのかと思いきや、真相はまったく異なりました。
真相は、「予告の締め切り時点で、キャラクターもタイトルもアイデアが一切浮かんでいなかった」という切迫した事情によるものでした。藤子・F・不二雄先生自身が後に自伝的エッセイ漫画で明かした「ドラえもん誕生秘話」によると、新連載の締め切り前夜、アイデアが出ないまま夜が明けてしまい、パニックに陥ったといいます。
途方に暮れて自宅の階段を駆け下りた際、愛娘が遊んでいた「ポロンちゃん(おきあがりこぼし)」につまずいて転倒。その瞬間、以前から部屋に入り込んできていた「野良猫」の記憶と「おきあがりこぼし」の形状が頭の中で合体し、丸っこいネコ型ロボットのビジュアルがひらめいたとされています。土壇場での偶然と極限の閃きが、歴史的名作を生み出す決定打となりました。