相撲界屈指のサラブレッドとして知られる納谷兄弟のルーツを紐解くには、まずその類いまれな家系図を理解する必要があります。母方の祖父は、幕内最高優勝32回を誇り「巨人・大鵬・卵焼き」と称された昭和の大横綱・大鵬(故・納谷幸喜氏)。そして父は、気迫あふれる取り口で殊勲賞3回、敢闘賞3回、技能賞1回を獲得し、幕尻優勝の奇跡も演じた元関脇・貴闘力(鎌苅忠茂氏)です。
貴闘力は大鵬の三女である美香さんと結婚し、大鵬部屋を継承する形で大嶽部屋の師匠となりました。この二人の間に生まれたのが、いわゆる「納谷4兄弟」です。血統の重みは想像を絶するものがあり、誕生した瞬間から角界関係者やメディアの熱い視線に晒され続けてきました。
しかし、家庭環境は平坦ではありませんでした。2010年に発覚した野球賭博問題により、父・貴闘力は日本相撲協会から解雇処分を受け、角界を去ることになります。その後、両親は離婚。兄弟たちは母・美香さんの手ひとつで育てられることになりました。幼少期に突如として訪れた一家離散の危機と世間からの厳しいバッシングは、多感な少年たちにとってあまりにも残酷な現実でした。
だが、子どもたちは相撲と格闘技の道を捨てませんでした。「祖父の名を再び土俵で輝かせる」「相撲で母に恩返しをする」という強い信念のもと、長男を除く3人が大相撲の道へ、長男はプロレスの道へと進み、それぞれが己の肉体ひとつで運命を切り拓いていったのです。