『黒革の手帖』はこれまで何度もドラマ化され、昭和の名女優・山本陽子をはじめ、浅野ゆう子、米倉涼子、武井咲といったトップ女優たちが原口元子を演じてきました。中でも視聴者の記憶に鮮烈に刻まれているのが、テレビ朝日系「木曜ドラマ」枠で大ヒットを記録した2004年の米倉涼子版と、2017年の武井咲版です。
米倉涼子と武井咲の決定的な違いは、主人公が背負う「業」の表出方法にありました。当時の米倉涼子は20代後半から30代へと差し掛かる脂の乗った時期で、堂々たる長身と力強い眼力により、男社会の頂点を力ずくでねじ伏せる「ゴージャスな女王」としての迫力を全面に押し出しました。対する2017年の武井咲は、歴代最年少となる23歳で元子役に抜擢。銀行の「派遣切り」に直面した現代の若者が、冷ややかな微笑みの裏に孤独と狂気を秘めて成り上がるという、張り詰めた硝子のようなリアリティを提示しました。
また、元子の宿敵となるホステス・山田波子のキャスト対決も見逃せません。2004年版の釈由美子は「おねだり上手で図太い小悪魔系」を愛嬌たっぷりに熱演し、元子との壮絶なビンタの応酬で話題を呼びました。一方、2017年版の仲里依紗は、元子への嫉妬と劣等感から狂気に染まっていく凄まじい怪演を披露。SNS上では「仲里依紗の怪演が怖すぎる」と大きなトレンドを生み出し、新時代の波子像を決定づけました。