本作の屋台骨を支えたのは、間違いなく主演の役所広司による圧倒的な存在感だ。定年を迎え、残された時間を淡々と紡ぐ主人公を演じた彼は、今回の独占インタビューで撮影現場の緊迫した舞台裏を語ってくれた。
「リハーサルで完璧に作り込んだ芝居を、本番直前にすべて捨て去る作業の連続でした。監督が求めたのは、演じることではなく、そこに存在してしまうこと。台本に書かれていない沈黙の中にこそ、人間の本質がこぼれ落ちる」と役所氏は振り返る。共演者とのアドリブから生まれた名シーンの数々は、予定調和を嫌う現場の緊張感から生まれた奇跡の産物だった。