なぜ私たちの脳は、恐怖の象徴として「ゾンビ」を選ぶのだろうか。その背景には、長年培われてきた視覚メディアの影響を無視できない。巨匠ジョージ・A・ロメロが手がけた『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以来、無数のホラー映画が死者の蠢く恐怖を描き続けてきた。個性を失い、ただ本能のままに襲い来る存在は、現代社会における自我の喪失や群衆の暴走という寓意を含んでいる。
さらに近年では、NetflixやHBOといった動画配信プラットフォームで『ウォーキング・デッド』をはじめとする極限状態のゾンビサバイバル作品が世界的ヒットを記録した。過剰な視覚刺激や刺激的なシナリオは脳の記憶回路に深く刻み込まれる。日頃からこうした映像作品に親しんでいると、強いストレスを感じた際に脳が「恐怖のデータベース」から即座にゾンビを引っ張り出し、夢の配役として割り当てる現象が起きるのだ。