メートル法が浸透した日本において、なぜケーキだけが今なお「号数」で取引されているのか。その背景には、明治から昭和にかけて日本の洋菓子製造業が発展してきた独自の歴史的経緯が存在する。
古来より日本で使われてきた尺貫法では、長さの基本単位として「寸(約3.03cm)」が用いられてきた。西洋からケーキの焼き型や製法が伝来した際、日本の金型職人たちは手慣れた寸法の規格をそのまま金型の号数に転用した。「1号=1寸」という換算ルールは、職人の間で直感的に分かりやすい規格として瞬く間に定着したのである。
一般社団法人日本洋菓子協会連合会などの業界団体が技術向上や衛生管理の標準化を進めるなかでも、この伝統的な呼称は職人から消費者へと受け継がれ、今や日本のスイーツ文化に欠かせない共通言語となった。洋の東西が見事に融合した規格の成り立ちを知ると、ショーケースの並びも違った景色に見えてくる。