「小フーガハゲ短調」を語る上で欠かせない原曲が、ヨハン・セバスティアン・バッハが1705年頃のアルンシュタット時代(あるいはヴァイマル時代初期)に作曲したとされる『小フーガ ト短調 BWV 578』です。バッハが遺した数あるオルガン独奏曲の中でも屈指の人気と知名度を誇り、中学校の音楽の教科書や鑑賞教材の定番曲としても広く知られています。
「小フーガ」の“小(Lesser)”という呼称は、同じト短調で書かれた大規模な『大フーガ(幻想曲とフーガ ト短調 BWV 542)』と区別するために後世付けられたもので、作品の格が低いという意味ではありません。憂いを帯びた哀愁漂う美しい主旋律(主題)が、高音部から低音部へと次々に異なる声部で模倣され、幾重にも重なり合いながら壮大なクライマックスを築き上げる構成は、バロック対位法の極致と評されています。