万が一、愛犬に柿の果肉をおすそ分けする場合、厳格な体重管理と分量設定が不可欠である。犬にとって果物は必須栄養素ではなく、あくまで嗜好品(おやつ)の域を出ない。1日の適切な摂取カロリーにおける副食の上限は一般に「総給餌カロリーの10%以内」と定義されるが、消化管トラブルを防ぐためには総カロリーの5%以下、実重量にしてほんの数口にとどめるのが鉄則である。
体重別の安全な給餌目安量(完全甘柿・種と皮を完全除去・細かく刻んだ状態)は以下の数値を厳守したい。
・超小型犬(4kg未満):小さじ1杯程度(約5〜10g、1cm角のダイスカット1個分)
・小型犬(5〜10kg):約15〜20g(1cm角のダイスカット2〜3個分)
・中型犬(10〜20kg):約25〜35g(くし形切りの1/4個分程度)
・大型犬(20kg以上):約40〜50g(くし形切りの半分程度)
この上限値を超えて与えた場合、犬が柿を食べて下痢や嘔吐を起こす原因が如実に現れる。柿に含まれるペクチンは適量であれば便を固める作用があるものの、過剰になれば浸透圧性下痢を誘発する。さらに、冷蔵庫から出したばかりの冷えた柿は胃腸の局所血流を低下させ、消化酵素の活性を著しく阻害する。
加えて、病態生理の観点から絶対に看過できないのが柿の過剰摂取による消化不良と腎臓病リスクである。カリウムは通常、腎臓から速やかに尿中へ排泄されるが、慢性腎臓病(CKD)を患っている犬や腎機能が低下傾向にあるシニア犬では、過剰なカリウムを体外へ排出できない。体内にカリウムが鬱滞すると「高カリウム血症」を発症し、徐脈や不整脈を引き起こし、最悪の場合は心停止に至る。
同様に、老犬や子犬に柿を食べさせる危険性も極めて高い。子犬は消化酵素の分泌や腸内細菌叢の構築が未発達であり、わずかな果肉でも激しい胃腸炎を起こして脱水に陥りやすい。一方、シニア犬は咀嚼力や嚥下反射が低下しており、誤嚥性肺炎のリスクが高まるだけでなく、前述の潜在的な腎疾患や心疾患を抱えている確率が高いため、給餌は全面的に避けるべきである。