物語が終盤に進むにつれ、ナッツ混入事件の真犯人が平古祥平(玉森裕太)の誤認ミスであり、尾花はその未来を守るために泥をかぶってパリを去ったという決定的な真実が浮き彫りになります。しかし、この真相を知ったリンダの怒りは鎮まるどころか、より先鋭化しました。「才能ある若手をかばう美談」など美食界では通用しないという、プロフェッショナルの矜持があったためです。
リンダは「グランメゾン東京が三つ星を獲ることは絶対に許さない。私がその息の根を止める」と宣言し、自身のコネクションと影響力を総動員して審査員たちに圧力をかけようと画策します。しかし、そんな彼女に対して尾花と早見倫子(鈴木京香)が提示した回答は、言論による弁明ではなく「一皿の料理」でした。
第10話のクライマックス、プレオープンに招かれたリンダの前に運ばれたのは、尾花が彼女のためだけに構築した特別なコース料理でした。フレンチの伝統技法を用いながら、日本の四季と生産者の情熱を昇華させた圧倒的な料理の前に、リンダの頑なな復讐心は静かに融解していきます。
料理を一口含んだ瞬間、カメラが捉えたのはリンダの目から静かにこぼれ落ちた一筋の涙でした。言葉を発することなく、皿をきれいに平らげた彼女の表情は、憎悪の呪縛から解放された一人の純粋な美食愛好家へと戻っていました。私情による復讐ではなく、目の前にある本物の料理の価値を認めること——リンダが下したこの審判によって、尾花との過去の因縁はついに清算され、グランメゾン東京の三つ星獲得への道が拓かれたのです。