ネット上の掲示板やSNSを調査すると、「眉毛用ハサミで切った」「裁縫針をライターで炙って突いたらポロッと取れた」といった体験談が定期的にバズを生み出しています。こうした個人の武勇伝的な投稿を目にすると、誰しも「わざわざ病院に行かなくても自分でできるのではないか」と錯覚してしまいます。
しかし、医療社会学の観点から見れば、これは典型的な「生存者バイアス」の産物です。運良く傷が浅く済み、重大な感染を起こさなかった極めて稀なケースのみが面白おかしく投稿される一方で、失敗して激しい化膿を起こした人や、目の下に消えない陥凹性瘢痕(クレーター)を残してしまった無数の被害者は、恥ずかしさや後悔から口を閉ざしてしまいます。大手Q&Aサイトや医療相談プラットフォームには、「自力で突いたら血豆になり、数ヶ月経っても黒ずみが消えない」「化膿して眼科に駆け込み、ひどく叱責された」という悲痛な相談が絶えません。
また、稗粒腫は自然治癒するという言説についても、年齢に応じた正確な理解が求められます。新生児や乳幼児に生じる先天性の稗粒腫であれば、活発な皮膚代謝によって数週間から数ヶ月の間に自然脱落することが医学的に確認されています。しかし、加齢や慢性的な摩擦、紫外線ダメージによって生じた成人期の稗粒腫は、ターンオーバーの周期が長期化しているため、自然に脱落することは極めて稀です。何年も同じ位置に留まり続け、徐々に硬さを増していくのが一般的です。