『幸福論』の演奏をさらに一段階引き上げるために、各楽器における演奏の勘所を押さえておきましょう。
アコギのストローク:シングル版の「しなやかさ」と悦楽編の「ドライブ感」
アコースティックギターで弾く場合、バージョンによってピッキングの意識を明確に変える必要があります。
- シングル版のアコギストローク:基本は16ビートのシンコペーションを意識した軽やかなストロークです。強拍(2拍目・4拍目)のアクセントをしっかり出しつつ、弱拍は弦全体を鳴らさず高音弦だけを優しく撫でるように弾くと、歌のメロディを邪魔しない上品なバッキングになります。
- 悦楽編のアコギ/エレキストローク:ダウンピッキング主体の直線的な8ビートストロークが基本です。右手のブリッジミュートを適度に混ぜて音の輪郭をタイトに保ち、サビで一気に開放することでバンドサウンドのダイナミクスを再現できます。
ピアノコード譜のポイント:トップノートで歌のラインをなぞる
ピアノで弾き語りや伴奏を行う場合、単に左手でルートを押し、右手で3和音をベタ弾きするだけでは原曲の洗練されたニュアンスが出ません。
右手でコードを押さえる際、一番高い音(トップノート)がボーカルの旋律と美しく調和する転回形を選んでください。さらに、9th(ナインス)やsus4(サスフォー)のテンションノートをサビ前やフレーズのつなぎ目に少し加えるだけで、椎名林檎特有の艶やかな響きが立ち現れます。
ベースタブ譜のポイント:亀田誠治スタイルの「歌うベースライン」
バンドでコピーする際、ベースプレイヤーにとって『幸福論』は格好の教科書です。名匠・亀田誠治氏の手によるベースラインは、単にルート音を刻むだけにとどまりません。
サビへ向かう直前のオクターブ跳躍や、コードの3度・5度を経由してスムーズに次の和音へ渡るパッシングトーン(経過音)が随所に散りばめられています。ベースタブ譜を追う際は、TABの数字だけを見るのではなく、「今どのコードの構成音を弾いているのか」を意識することで、楽曲全体のグルーヴが劇的に向上します。