数ある映像化作品の中でも、日本の視聴者にとって圧倒的な存在感を放ち続けているのが2005年放送のTBSドラマ版です。当時18歳だった井上真央が牧野つくし役に抜擢された経緯には、明確なドラマ制作陣の狙いと原作者の賛同がありました。
当時、子役時代に出演した昼ドラ『キッズ・ウォー』シリーズ(TBS系)で「ざけんなよ!」の決め台詞とともに確固たる知名度と演技力を持っていた井上真央。彼女が持つ「どんな理不尽にも屈しない眼差し」と「観客を自然と味方につける庶民派の親しみやすさ」は、制作統括の瀬戸口克陽プロデューサーや演出チームが求めていた牧野つくし像そのものでした。
道明寺司役を務めた嵐の松本潤との共演においては、現場での徹底したディスカッションが知られています。クランクイン当初、原作の過激ないじめ描写やバイオレンス要素を実写ドラマとしてどのように成立させるか、キャスト・スタッフ間で激論が交わされました。その中で、井上真央が赤札を貼られても一切怯まず、第1話ラストで道明寺に強烈なパンチを食らわせる名シーンは、リハーサルを何度も重ねて生まれた現場の熱量の賜物でした。
視聴者の共感を呼んだのは、決して「守られるだけのヒロイン」ではなかった点です。第1シリーズの平均視聴率は19.8%、続編『花より男子2(リターンズ)』では第1話から22.4%を記録し、最終回では27.6%をマーク(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。2008年公開の劇場版『花より男子F』は興行収入77.5億円を記録し、同年の日本映画実写作品で年間興収1位を獲得しました。数字と作品評価の両面で、井上真央版つくしは実写化の歴史に金字塔を打ち立てたのです。