アンジェルマン症候群の最も象徴的な特徴として語られるのが、「常によく笑い、幸福感に満ちた表情を見せること」です。ちょっとした物音や他者の動作に反応して無邪気に声を上げて笑い、手をパタパタと小鳥の羽のように羽ばたかせる常同行動(ハンドフラッピング)が見られます。かつては外見の特徴から「ハッピーパペット(操り人形)症候群」と称された歴史もありますが、現在は差別的な響きを避けるため医師の名を冠した正式名称が用いられています。
なぜ彼らは絶え間なく笑顔を見せるのか。小児神経学の分析によると、これは単に「機嫌が良い」「常に喜んでいる」わけではありません。UBE3A遺伝子の欠損によって脳内の情動抑制を司る小脳や大脳辺縁系、GABA受容体を介した抑制性神経伝達のバランスが崩れ、わずかな外部刺激に対しても笑いの発作や多幸的反応として出力されてしまう神経学的症状であることが解明されています。したがって、体調不良や身体の痛みを抱えている最中であっても笑顔を作ってしまうケースがあり、周囲の支援者は「笑っているから大丈夫」と過信せず、バイタルサインや細かな身振りを注意深く観察することが求められます。
出生直後から乳児期にかけては目立った奇形が少ないため、早期発見が難しい疾患としても知られています。しかし、経過を観察していくと以下のような赤ちゃんの初期症状が次第に浮き彫りになってきます。
- 生後0〜6か月頃:筋緊張低下(身体が柔らかすぎるフロッピーインファント)、お乳を吸う力が弱い哺乳障害、クーイングや喃語(なんご)が極端に少ない。
- 生後6〜12か月頃:首すわりや寝返り、お座りなど運動発達の著しい遅れ。頭囲の成長スピードが鈍化し、小頭症の兆候が現れ始める。
- 1歳〜3歳頃:言葉が全く出ない、歩行時に手足を突っ張ってぎこちなく歩く(失調性歩行)、極端な睡眠障害(夜中に何度も目を覚ます、総睡眠時間が3〜4時間と短い)。
- てんかん発作の発症:患者の80%以上が生後1歳から3歳前後にてんかんを発症します。脱力発作やミオクローヌス発作など多彩で、脳波検査では特徴的な高振幅遅波(ノッチド・デルタ波など)が確認されます。
さらに、多くの患児に共通する興味深い行動特性として「水への異常な執着」が挙げられます。お風呂場、洗面台、水たまり、プールなどに強い興味を示し、水遊びを始めると何時間でも夢中になる傾向があります。尖った下顎や大きな口、すきっ歯、色素脱失(髪や肌の色が比較的薄い)といった特有の顔貌特徴も成長とともに顕著になります。