ランチタイムの高田馬場を歩けば、テイクアウトを待つ人々とカウンター席で頬張る客で賑わう同店の姿がすぐに視界へ入ります。なぜ一般的なベーカリーや他のエスニック料理店ではなく、バインミーシンチャオに行列ができるのか。その人気の理由と真相を探ると、徹底した「現地再現性」と「日本人の味覚構造への合致」という2つの要素が浮かび上がってきます。
多くの日本人がイメージするフランスパンは、噛みごたえのある硬いクラスト(表皮)を持っています。しかし、ベトナム現地のバインミーは全く異なります。外皮はウエハースのように繊細でパリッと崩れ、内側は空気を含んで驚くほど軽い仕上がりです。創業者の言葉を借りれば、「本物のバインミーは口に入れた瞬間にサクッと弾け、具材のジューシーさと一体にならなければならない」という哲学が存在します。この独特の食感を実現するため、同店では特注のオーブンと配合にこだわり抜き、毎日焼き立てを提供しています。
さらに、味の骨格を成す自家製レバーパテの存在も見逃せません。豚レバー特有の臭みを香味野菜とスパイスで極限まで抑え込み、コク深い旨味だけを抽出しています。そこに甘酸っぱい大根とニンジンのなます(ドーチュア)、フレッシュなパクチー、そしてベトナム直輸入の調味料が折り重なることで、五味(甘味・酸味・辛味・苦味・塩味)が見事な調和を生み出しています。
その実力は公の場でも証明されています。駐日ベトナム大使館が主催する建国記念レセプションにおいて、来賓に振る舞う料理としてバインミーシンチャオが選ばれた実績は、まさに本国政府のお墨付きを得た決定的な証拠といえます。単なる流行のファストフードではなく、国の誇りを背負った本物の味だからこそ、多くのリピーターを引き寄せて離さないのです。