是枝裕和監督と役所広司のタッグと聞いて、胸を躍らせない映画ファンはいないだろう。人間性の深淵をどこまでも温かく、時に鋭く切り取ってきた是枝演出と、画面に存在するだけで圧倒的な説得力をもたらす役所の演技力。このふたつの才能が交差する時、常に名作が生まれてきた。
しかし今回の挑戦は、これまでの心温まるヒューマンドラマのイメージを大きく覆すものになりそうだ。本作で描かれるのは、極限状態に追い込まれた男が辿る凄惨な精神的葛藤である。これまでの二人のキャリアにおける集大成でありながら、全く新しい領域への踏み出しとなることは間違いない。