心拍確認によってリスクが激減するとはいえ、統計を精査する上で避けて通れない要素が「母体年齢」です。医療現場のデータでは、年齢別の流産率には顕著な傾斜が存在します。
日本産科婦人科学会や不妊治療関連の臨床統計によると、20代から34歳までの女性における自然流産率は約10〜15%程度にとどまります。しかし、35歳を超えると約20%、40歳では約35〜40%、42歳以上になると約50%以上へと上昇カーブを描きます。心拍確認後のステージにおいても同様の傾向が見られ、20代〜30代前半では心拍確認後の流産率が約2〜3%であるのに対し、40代以上では心拍確認後であっても約8〜10%前後の流産リスクが残ると報告されています。
なぜ年齢によってこれほどまでに差が生じるのでしょうか。その根底にあるのが受精卵の胎児染色体異常です。流産した胎児の組織検査を行うと、妊娠初期(妊娠12週未満)に起こる流産の約70〜80%以上にトリソミー(染色体の過剰)などの偶発的な染色体不分離が認められます。卵子は女性が生まれた時から体内に存在し、加齢とともに細胞分裂のエラーが起きやすくなります。これは母体の生活習慣や仕事のストレス、運動などが原因ではなく、受精の瞬間に決定づけられた生命のプログラムによる偶発事象です。
なお、過去に心拍確認後を含め2回以上の流産や死産を繰り返す場合には、偶発的な染色体異常の枠組みを超えた要因(抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常、夫婦の染色体構造異常、内分泌異常など)が隠れているケースも考えられます。この場合は産婦人科専門医のもとで不育症の検査を受け、アスピリン療法やヘパリン療法などの適切な医療介入を検討することが確実な次の一歩につながります。