かつて日本の牛肉市場を席巻したのは、霜降りの美しさを競う「A5ランク」神話だった。しかし、消費者の舌は確実に変化している。脂の甘みではなく、赤身肉が持つ本来の濃密な旨味と香り。それらを極限まで高めるのが、温度と湿度、そして風を厳密に管理するドライエイジング技術だ。
ニューヨークのステーキハウスで主流だったこの手法を、日本の気候風土に合わせてローカライズした功績は大きい。ただ寝かせるだけではない。カビや微生物の働きをコントロールし、肉自体が持つ酵素でタンパク質をアミノ酸へと分解していく。そのプロセスは、まるで上質なワインやチーズの熟成のようだ。