1989年のメジャーデビュー当時、レコード会社であるテイチクエンタテインメントのスタジオには、新しい時代の風が吹き荒れていた。それまでの歌謡曲スタイルとは一線を画す、ストレートで解放感あふれるポップ・ロック。その中心にいたのが、キャッチーなメロディと圧倒的な親しみやすさを武器にするLINDBERGだった。
ブレイクの決定打となったのは、1990年にリリースされた2枚目のシングル「今すぐKiss Me」だ。フジテレビ系ドラマ『世界で一番君が好き』の主題歌に起用されるやいなや、ドラマの爆発的なヒットとともに日本中の街頭やラジオからこの曲が流れない日はなくなった。疾走感あふれるビートに乗せた軽快なボーカルは、バブル景気に沸く社会の空気を鮮やかに切り取っていた。
だが、その華やかな狂騒の陰で、ボーカルとしての圧迫感は計り知れないものがあった。連日のテレビ出演、ライブツアー、そして過密なレコーディングスケジュール。「明日の声が出るだろうか」という密かな不安を抱えながらも、彼女は笑顔でマイクを握り続けた。時代のアイコンとして駆け抜けたこの時期の経験が、後の彼女のボーカルスタイルと音楽観を決定づけることとなる。