物語の大きなターニングポイントとなったのが、『偽物語』以降に見せたトレードマークである長い黒髪(紫髪)の大胆なショートカット化です。アニメ第1期で見慣れたビジュアルを突然脱ぎ捨てた変化に対し、当時は一部読者から戸惑いの声も上がりました。
彼女が髪を切った最大の理由は、「病弱で保護されるべき悲劇のヒロイン」からの完全な精神的脱却にあります。ロングヘアは病弱だった中学時代、そして怪異に囚われて動けなかった高校初期の自分を引きずった象徴でもありました。暦という他者を受け入れ、過去を背負い直す覚悟を決めた彼女にとって、過去の呪縛を物理的に切り落とすイニシエーション(通過儀礼)こそが断髪だったのです。
ショートカットになったひたぎは、毒舌の切れ味こそ保ちつつも、他者を威嚇するための文房具を手放しました。外見の劇的な変化は、自身のアイデンティティを「傷つけられた被害者」から「未来を自ら選び取る意志ある女性」へと再構築した確固たる証拠といえます。