いらすとやの面白さを語る上で欠かせないのが、掲示板カルチャーやSNSのユーザーとの相互作用です。特に5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の「なんでも実況J(なんJ)」やVIP板などでは、古くから「いらすとやの素材だけで名作マンガを再現するスレ」や「いらすとやだけで凶悪事件の相関図を作る」といった高度な遊びが定着してきました。
「どんなマニアックな名シーンを作ろうとしても、必ずぴったりな狂気素材が既に用意されている」「みふね氏はなんJ民なのではないか」といったネットの反応が飛び交うほど、素材の網羅性は異様な領域に達しています。例えば、「意識の高い発言を繰り返す起業家」や「怪しい投資セミナーに騙される若者」といった人物類型は、テキストのスラングとして流行したわずか数日後には、すでにいらすとや上に素材としてアップロードされていました。
筆者が現場のウェブディレクターやソーシャルメディア運用担当者に取材を重ねると、次のような生々しい証言が返ってきます。
「新入社員向けの社内コンプライアンス講習資料を作るとき、パワハラや横領といった生々しいテーマを既存の写真素材でやると空気が重くなりすぎる。しかし、いらすとやのシュールな素材を使うと、毒気を抜きつつも問題の本質をユーモアとして伝えられる。あの絶妙な脱力感は、他のどの有料ストックフォトにも代えがたい武器です」(大手IT企業・広報担当者)
このように、インターネットの皮肉屋たちが楽しむネタ画像としての側面と、ビジネスパーソンが重宝する緩衝材としての機能。この二重構造が、いらすとやを単なる「面白いサイト」から「文化現象」へと押し上げました。