結論から述べると、通常の旅客機トイレで座ったまま洗浄ボタンを押しても、内臓や腸が体外へ吸い出される事故は物理的に起こり得ません。航空機メーカーや各国の航空安全当局による公式検証において、人体を破壊するレベルの陰圧が体内に直接作用することはないと結論づけられています。
この噂が世界的に拡散した発端は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて米国のチェーンメールやネット掲示板で広まった「太った女性客が座ったまま流し、腸を吸い出されて病院へ緊急搬送された」という怪談です。2000年代中盤には米国の人気科学検証番組『MythBusters(怪しい伝説)』において、人体模型と豚の内臓を用いた大掛かりな再現実験が行われました。
実験の結果、一般的な航空機の便座形状では人間の臀部と便器が完全な真空密閉状態(エアタイト)になることはなく、内臓を吸い出すほどの吸引力は発生しないことが実証され、噂は明確に「バスター(虚構)」と判定されました。しかし、バキューム機構の破壊的な作動音と「上空の気圧差」という科学的要素が組み合わさったことで、現代に至るまでリアルな恐怖譚として語り継がれています。