電気グルーヴのステージ演出において、視覚的な破壊力を一手に担ってきたのがピエール瀧さんです。その中でも屈指の知名度を誇るのがケンタウロス瀧の由来となった半人半馬の着ぐるみ衣装です。この強烈なビジュアルが初めて世に放たれたのは、1994年に開催された全国ツアー「野村の人ツアー」でした。
当時、シングル『Shangri-La』のメガヒット前夜でありながら、すでにアンダーグラウンドとメジャーの境界を破壊していた電気グルーヴ。相棒である石野卓球さんとピエール瀧さんの間では、「ライブ中にいかに観客の予測を裏切り、純度の高い悪ふざけを本気でやり切るか」という命題が常に共有されていました。関係者の証言や当時の音楽誌インタビューによると、電気グルーヴの演出理由は極めてシンプルであり、「ステージ上で瀧が手持ち無沙汰にならないよう、視覚的に最も理不尽な負荷をかけること」でした。
神話に登場する気高いケンタウロスを、体格の良い瀧さんが雑な質感の着ぐるみとして装着する。その姿で真顔のままステージを疾走し、打ち込みのハードテクノに合わせて奇声を上げるパフォーマンスは、既存のロックバンドの定型を完全に破壊しました。これがピエール瀧のケンタウロスの元ネタであり、不条理ギャグをスタジアム級のスケールで鳴らす電気グルーヴの美学が凝縮された瞬間だったのです。