太田和彦氏のプライベートを理解するうえで欠かせないのが、その卓越したキャリアと美意識のバックボーンです。1946年(昭和21年)3月生まれ、長野県木曽郡にルーツを持ち、松本市で育った太田氏は、東京教育大学(現・筑波大学)教育学部芸術学科を卒業後、1970年に資生堂へ入社しました。
同社の宣伝制作部において、伝説的な企業文化誌『花椿』のアートディレクションや数々の革新的な広告デザインを手掛け、日本のグラフィックデザイン界の第一線で活躍。1989年にデザイン事務所「アマゾンデザイン」を設立して独立後、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)教授を務めるなど、デザインの領域で輝かしい実績を残しています。
その一方で、1980年代後半から本格化した居酒屋探訪のエッセイ執筆は、従来のグルメガイドとは一線を画す「街の文化・歴史・美学」をすくい取る文学性の高いアプローチで大反響を呼びました。『居酒屋百選』シリーズや『ニッポン居酒屋放浪記』などの著作は、今なお大人の酒飲みたちのバイブルとして読み継がれています。