沖縄県内には、屋内に侵入する衛生害虫だけでなく、原生林やマングローブ林の生態系を支える多様な野外性ゴキブリが生息しています。沖縄のゴキブリ事情を正しく理解するには、衛生害虫としての種と、自然界の分解者としての種を明確に区別することが不可欠です。
代表的な屋内害虫としては前述のワモンゴキブリのほか、体長30〜35mm前後で光沢が強いトビイロゴキブリや、飲食店厨房に集中する微小なチャバネゴキブリが挙げられます。一方、八重山諸島などに生息するヤエヤママダラゴキブリは、成虫の体長が50mm近くに達し、日本国内に生息するゴキブリ目の中で最大級のボリュームを誇ります。しかし、ヤエヤママダラゴキブリは森林の朽ち木や落葉層を主住処とし、菌類や腐植質を食べる純粋な野外性昆虫であり、人家に定着して病原菌を媒介することはありません。
本州との決定的な違いは、「下水道網や地下ピットにワモンゴキブリの巨大コロニーが形成されている点」です。温暖な気候により地下インフラが天然の温室と化しており、夜間になるとマンホールの隙間や排水パイプを通じて地上部へ一斉に這い出してくる構造的リスクが存在します。