原作漫画を手掛けた若林稔弥は、『徒然チルドレン』などの青春群像劇で培った繊細な心理描写を、本作では「労働と自己肯定感の回復」というテーマに転換させて昇華させました。星海社のウェブコミック配信サイト「ツイ4」で連載された原作は全7巻で完結を迎えていますが、その最終回(結末)は多くの読者に深い余韻を残しています。
物語のクライマックスにかけて、カナコと桜井の所属する組織は、敵対する裏社会の巨大シンジケートや、カナコの素性に迫る執拗な追跡者たちとの全面抗争に巻き込まれます。かつてのカナコなら理不尽な運命にただ怯え、理不尽に耐えるだけだったはずでした。しかし、彼女は「自分の命と生活を守るため、そして大切な職場仲間を守るため」に、躊躇なく冷徹な銃撃戦へ身を投じます。
圧倒的な修羅場をくぐり抜けた後、物語が着地したのは「日常の尊さ」でした。最終盤、カナコは暗殺の仕事を辞めて表の世界に戻る選択肢を与えられます。しかし彼女が選んだのは、「暗殺者として桜井と共に生きていく道」でした。
恋愛関係へと安易に発展するのではなく、背中を預け合える「至高の仕事仲間(バディ)」としての絆を深めたカナコと桜井。前職のブラック企業では誰にも認められず、すり減るだけだったカナコが、命を奪う裏稼業の中で初めて「あなたが必要だ」と肯定され、充実した給与と休暇を手に入れて笑顔を浮かべる――。タイトルの『幸せカナコ』が意味する皮肉と真実が美しく結実する、見事なグランドフィナーレとなっています。