慣用句「途方に暮れる」の読み方は「とほうにくれる」です。国語辞典の標準とされる『デジタル大辞泉』や『広辞苑』において、この言葉は「方法や手段が尽きて、どうしてよいかわからなくなる」「困り果てる」と定義されています。単に「困った」「悩んでいる」というレベルにとどまらず、打てる手が完全に底をつき、次に取るべき行動の選択肢が視界から消え去った極限状態を言い表します。
この慣用句が表す心理状態の本質は、認知心理学における「認知的フリーズ(Cognitive Freeze)」と高い親和性を持ちます。脳科学の知見によれば、人間は予期せぬ危機の発生によって許容量を超えるストレス情報を受け取ると、大脳皮質の前頭前野による論理的判断が一時的に停止し、闘争・逃走反応の前に「身動きが取れなくなる」という生体防御の停止状態に突入します。つまり「途方に暮れる」とは、単なる気分の落ち込みではなく、人間の防衛本能が引き起こす知的な停止状態を、詩的かつ的確に切り取った表現です。