ネット上の情報では単なる「癒やしのパワースポット」として紹介されがちですが、この神域を語る上で決して避けて通れない重大な歴史的背景があります。それが2010年代半ばに全国的な論争を巻き起こしたマンション開発経緯です。
発端は、神社後方に位置し、磐座群と一体となって社叢林を形成していた隣接地(旧企業の保養所跡地)を民間デベロッパーが取得し、大規模分譲マンションの建設を計画したことでした。計画地内には、古代からの祭祀遺構である磐座が存在していたため、神社側や地元住民、文化人、考古学研究者らは「聖域の景観破壊であり、かけがえのない巨石信仰の破壊につながる」として猛烈な反対運動を展開しました。
西宮市議会への請願や数万筆に及ぶ反対署名運動、さらには工事差し止めを求める法廷闘争へと発展し、全国の報道各社でも「自然信仰と都市開発の衝突」の典型例として大きく報じられました。最終的に一定の開発が進んだものの、この闘争を契機に、越木岩の社叢と磐座がいかに脆く、かつ貴重な歴史的景観であるかが広く再認識されることとなりました。
「現在の静寂は、当たり前に残されてきたものではなく、地域社会と神社が身を挺して守り抜いた防衛戦の結果である」という事実を知ることで、参拝時に目にする巨石と森の神聖さは、より一層の重みを持って胸に迫るはずです。