しかし、華麗なスポットライトを浴びた栄光の時間は長くは続きませんでした。20代後半を迎える頃、阿部寛のキャリアは突如として深い暗闇へと転落します。原因は「俳優としての壁」と「バブル崩壊による経済的破綻」という二重の激震でした。
当時のテレビドラマ界では、阿部寛の身長(公称189cm)は最大の障壁となりました。当時の日本人女優との身長差がありすぎて同じフレームに収まりにくく、カメラマンや演出家から敬遠される事態が頻発。「立ち姿は絵になるが、台詞を喋るとボロが出る」「モデル上がりの大根役者」という業界内の手厳しい評価が重なり、あれほどあった出演オファーは潮が引くように途絶えていきました。
追い打ちをかけたのが、バブル絶頂期に行っていた不動産投資の破綻です。当時のマネーブームに乗り、節税と資産運用を目的に購入した複数の投資用マンションの資産価値が、バブル崩壊とともに大暴落。手元には推定数億円に上る莫大な借金だけが取り残されました。
後に阿部寛本人が自著や特別番組のロングインタビューで振り返っているように、仕事が完全に激減した時期には、生活費を稼ぐためにパチンコ店に朝から並び、日銭を稼いで食いつなぐ日々が約3年間も続きました。「あの頃は、自分が何者なのか分からず、ただ恐怖しかなかった」と語る生々しい告白は、きらびやかな二枚目スターのイメージとはかけ離れた、過酷な阿部寛の下積み時代と苦労を雄弁に物語っています。