ネット上の掲示板やSNSでは、長年にわたり「たいと(84画)という名字を持つ人物が日本に実在する」「昔、証券会社の名簿にこの文字の顧客が存在した」という都市伝説がまことしやかに語られてきました。
しかし、名字研究の第一人者たちや公的記録を丹念に追跡した専門調査機関のレポートによると、「たいと」という名字を持つ日本人が戸籍上に実在したという客観的証拠は存在しないというのが現代の結論です。
昭和40年代、ある証券会社の外務員が「極めて画数の多い珍しい名刺を見た」と語った証言が雑誌やコラムに取り上げられ、それが尾ひれをつけて「実在する名字」として全国に拡散したのが事の真相とされています。日本電信電話(NTT)の過去の電話帳データベース、全国の姓名分布調査、行政の住民基本台帳関係の文献を突き合わせても、この84画の文字を本姓とする登録者は一件も確認されていません。
実際に日本で法的に確認されている「画数の多い苗字」としては、以下のような伝統的な名字が実在します。
- 躑躅森(つつじもり):54画(岩手県などに実在)
- 雲類鷲(うるわし):40画(茨城県などに実在)
- 勘解由小路(かでのこうじ):36画(公家由来の名門)
このように、50画前後の名字は実在するものの、84画の「たいと」は現実の社会生活で使われた苗字ではなく、江戸時代から近代にかけての文字遊びや符丁、あるいは極めて限定的な私的屋号として考案された可能性が高いと判断されています。