松田洋治の声の表現力を語る上で絶対に外せないもう一つの伝説が、映画『タイタニック』におけるジャック・ドーソン(レオナルド・ディカプリオ)の日本語吹き替えです。日本テレビ版(妻夫木聡)、フジテレビ版(石田彰)など複数のバージョンが存在する同作において、VHS・DVD・ブルーレイの「ソフト版」として収録されたのが松田洋治のバージョンでした。
ネット上の映画コミュニティやSNSでは、「タイタニックのジャックは松田洋治版が最高傑作」という熱烈な支持が長年叫ばれています。その理由は、ディカプリオ特有の少年のような無邪気さと、過酷な貧困を生き抜いてきた青年のほろ苦い色気が、松田洋治の透き通るような声と奇跡的な調和を見せていたからです。
アシタカで見せた「古風な気品」とは打って変わり、ジャックでは自由奔放でチャーミングな軽妙さを披露。それでいて、クライマックスの冷たい海に浮かぶラストシーンで見せる震えるような囁きは、世界中の観客の涙を誘いました。「アシタカの声の人だと知らずにタイタニックを見て衝撃を受けた」という視聴者の声は後を絶たず、声優専業ではないにもかかわらず、洋画吹き替え史に残る金字塔を打ち立てています。