浴室の扉を開けた瞬間に鼻腔をくすぐる化石燃料特有の芳香。豊富温泉の最大の特徴であるこの油分は、大正15年(1926年)に石油の試掘を行っていた際、地下約960メートルから天然ガスとともに温泉水が噴出した歴史に由来します。石油採掘としては商業ベースに乗らなかったものの、湧き出た湯が皮膚病に著効を示すことが判明し、今日に至る日本最北の温泉街へと発展しました。
泉質名は含よう素-ナトリウム-塩化物温泉(弱アルカリ性高張性低温泉)。特筆すべきは、温泉水中に含まれる微量のタール様炭化水素化合物(原油成分)と、豊富に含まれるホウ素や重炭酸イオンです。皮膚科医や温泉医学の研究者らによる臨床観察によると、油膜成分が皮膚表面に薄い保護膜を形成して水分の蒸発を劇的に抑制するとともに、微量なタール成分が持つ自然な抗炎症作用や角質軟化作用が複合的に働き、過剰な免疫反応や激しい痒みを鎮静化させると考えられています。
一般的なステロイド外用薬とは異なり、天然の生薬のように皮膚バリアを物理的に保護しながら自己修復力を引き出すアプローチが、全国からアトピーや乾癬の重症患者が引きも切らず訪れる最大の理由です。