戦後日本の家庭の台所を支え続けてきたNHK『きょうの料理』や『キユーピー3分クッキング』の放送アーカイブを紐解くと、この定番料理が時代ごとにどう捉えられてきたかが克明に見えてくる。かつては丁寧な下茹でや出汁の取り方を手取り足取り教えることが主眼だった。昭和から平成にかけて、テレビの料理番組は正確な調理作法の規範として機能していた。
2000年代以降、クックパッド株式会社が牽引したCGM型のレシピ共有プラットフォームの台頭により、調理の個別最適化と簡略化が一気に進んだ。そして現在、フード&レシピメディア産業の主戦場はクラシルに代表される短尺動画や、YouTubeの料理系チャンネルへと移行している。
YouTubeでは、元割烹料理人たちが店舗レベルの技法を惜しげもなく解説する動画が数百万回再生を記録する。1分以内のショート動画で手軽さを求める潮流と、30分かけて理論と技をじっくり学ぶディープな潮流。レシピ情報が溢れかえる今だからこそ、小手先の時短術に頼らない本質的な技術への回帰が起きているのだ。