似た意味を持つ言葉として頻繁に比較されるのが「虎に翼」や「弁慶に薙刀」です。これらは一見すると同じように「強者がさらに強くなる状況」を指しているように見えますが、出典や込められた含意を比較すると明確な使い分けが存在します。
最大の違いとして挙げられるのが鬼に金棒と虎に翼の違いです。「虎に翼」は中国の法家思想書『韓非子』の「難勢篇」にある「毋為虎傅翼(虎のために翼を傅くること毋かれ)」に由来します。原典における意味は、「凶暴な虎に翼を与えて空を飛ばせてはならない」、すなわち「悪人に権勢や勢いを与えると、社会に甚大な害毒をもたらす」という強い戒め・警告でした。現代では肯定的な意味で使われるケースが増えたものの、古典的な教養の文脈では「暴走への警戒」という影を帯びています。これに対し、「鬼に金棒」は純粋な戦力強化や無敵性を肯定的に讃えるニュアンスで使われるのが通例です。
一方、弁慶に薙刀との共通点に目を向けると、「怪力無双の人物(武蔵坊弁慶)+その力を最大限に発揮する武器(大薙刀)」という構造が「鬼+金棒」と完全に一致します。民衆の英雄譚から生まれた日本固有の慣用句という点でも親和性が高く、親しみやすい比喩として併用されてきました。