コレステロールに関してネット上にはびこる古い常識と医学的事実の間には、依然として深刻なギャップが存在します。代表的な誤認を是正します。
かつて広く信じられていた「卵は1日1個まで」という通説は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」においてコレステロール摂取量の上限が撤廃された現在、科学的根拠を失っています。前述の通り食事由来の影響は小さく、健康な人であれば卵を2個食べたからといって直ちに血中値が跳ね上がるわけではありません。注意すべきは「コレステロールそのもの」ではなく、肝臓での合成を促す「飽和脂肪酸」と「トランス脂肪酸」の過剰摂取です。具体的には、脂身の多いバラ肉、市販の洋菓子、スナック菓子、加工肉の油こそが真の警戒対象です。
また、「有酸素運動を毎日走って行えばLDLは急激に下がる」という言説も半分誤りです。運動療法の主たる効果は「中性脂肪の減少」と「HDL(善玉)コレステロールの上昇」であり、LDLそのものを劇的に下げる効果は限定的(数%〜10%未満)であることが分かっています。運動だけで解決しようと固執することは禁物です。
最も恐ろしい盲点は、自覚症状が完全にゼロである点です。動脈硬化リスクと初期症状に関する臨床知見では、血管の内皮が傷つき、酸化した悪玉コレステロールがプラーク(コブ)を形成して血管腔を70%以上狭窄させるまで、痛みも息切れも一切生じません。「痛くも痒くもないから来年まで放置しよう」という判断は、サイレントキラーに血管壁を無防備に明け渡すに等しい行為と言えます。