こうした家庭内の危機は、個人の問題にとどまらない。日本医師会の関係者も、医療業界特有の閉鎖的な体質が家庭に与える影響を懸念する。「医師という職業は、患者の命を預かる極限の緊張感に日常的に晒されています。そのストレスが家庭内に持ち込まれたとき、夫婦関係に亀裂が入るケースは珍しくありません」。
外部からの干渉を嫌う医療界の風潮も相まって、問題は表面化しにくい。夫の権力や学会での立場を守るため、家庭内のトラブルはひた隠しにされる。組織の論理と個人の苦悩。医療業界が抱える構造的な歪みが、家庭というもっともプライベートな空間に深い影を落としている。