卒園ソングには、作詞・作曲者の綿密な意図と、楽曲が現場に定着していった固有の背景が存在します。
新沢としひこ氏作詞、中川ひろたか氏作曲による『にじ』は、もともと「雨上がりの日常」を描いたシンプルな童謡として誕生しました。しかし、幼稚園や保育園の卒園ソングとして長年愛される理由は、メロディの持つ独特の切なさと「きっと明日はいい天気」という未来への無垢な肯定感にあります。別れの寂しさを直接言葉にせず、天候の移り変わりに託すメタファー構造が、聴く大人の想像力をかき立て、深い感動を生み出します。
一方、坂田おさむ氏が手がけた『ありがとうの花』は、NHK『おかあさんといっしょ』から火がつき、卒園式の定番曲へと駆け上がった経緯を持ちます。「ありがとう」という身近な言葉が誰かの笑顔を作り、それが花のように咲き誇るという視覚的イメージの豊かさが特徴です。園児にとっても概念を理解しやすく、先生や保護者に対して「心からの感謝を届ける歌」として機能するため、式典のクライマックスに配置されるケースが増加しています。