有名観光地の賑わいから一歩離れると、地元住民しか知らないような静寂の穴場が顔を出す。例えば、千曲川を見下ろす姨捨(おばすて)の棚田は、夕刻になると水の張られた田んぼに月が映り込む「田毎の月」として知られ、ノスタルジックな風景が心を打つ。また、伊那谷に位置する陣馬形山の山頂からは、中央アルプスと南アルプスを一望できる大パノラマが広がり、知る人ぞ知る絶景スポットとなっている。
旅の大きな醍醐味である食文化においても、地域限定の味覚が見逃せない。澄んだ水と厳しい寒暖差が育む信州そばは、エリアごとに打ち方や汁の風風味覚が異なり、食べ比べの愉しみがある。戸隠の「ぼっち盛り」や高遠の「辛つゆそば」など、伝統の製法を守る老舗の暖簾をくぐれば、豊かな蕎麦の香味が鼻を抜ける。さらに、近年は地元産のりんごやブドウを使ったクラフトシードルやワイナリーの限定銘柄も登場し、ローカルグルメの奥行きを深めている。