入念に洗ったり牛乳に浸したりしたにもかかわらず、火を入れた瞬間に立ちのぼるあの独特の金属臭。多くの人が直面するこの問題の根底には、豚レバーの臭いが消えない理由として見落とされがちな「物理的要因」があります。
レバーの臭気成分の主たる発生源は、肉質そのものではなく組織内に残留した血液と、血液を運ぶ「血管」や周辺の「結合組織(白い筋膜)」です。血液に含まれるヘモグロビンの鉄分が空気に触れて酸化することで、強い生臭さを放つ揮発性アルデヒドなどが生成されます。牛乳に浸す方法は、乳脂肪球が表面の臭い分子を吸着する効果はあるものの、肉の奥に入り込んだ血塊までは排出できません。結果として、表面の臭いだけが一時的に薄れ、加熱時に芯から再び臭みが湧き出すことになります。
さらに、火を通しすぎることによる脱水も大きな原因です。レバーのタンパク質は65度前後から急激に凝固し、70度を超えると内部の水分を一気に絞り出して収縮します。下処理の段階で細胞の保水力を高めておかないと、熱が加わった瞬間に組織が固く締まり、あの嫌なパサパサ感を生んでしまいます。