なぜ、民間業者が調理した弁当がそこまで生徒に拒絶されてしまったのでしょうか。その決定的な要因は、文部科学省が定める厳格な「学校給食衛生管理基準」にありました。食中毒事故を未然に防ぐため、調理後から生徒が口にするまでに一定以上の時間が経過するデリバリー方式では、おかずの中心温度を「10℃以下に急速冷却」して配送・保管することが義務付けられていたのです。
夏場の安全を確保するための衛生基準が、冬場には仇となりました。暖房設備のない配膳室で保管された弁当箱を開けると、冷気に晒された炒め物や揚げ物は冷たく硬直化し、動物性油脂が固まって口当たりを著しく損ねました。「冷たい理由」は手抜きではなく、皮肉にも法的な衛生管理の徹底そのものにあったわけですが、食べる側の生徒にとっては「冷え切った不快な食事」以外の何物でもありませんでした。
さらに事態を悪化させたのが、相次ぐ異物混入トラブルの報道です。民間工場の製造ラインからビニール片、プラスチック片、髪の毛、小さな昆虫などが混入する事案が複数校で発覚。教育委員会への報告件数が年間で数百件に達した時期もあり、メディアが連日大々的に取り上げたことで、保護者の不信感は頂点に達しました。
その結果は、如実に「数値」として跳ね返ってきます。当時の大阪市教育委員会の調査によると、デリバリー弁当の平均残食率は一時20%〜25%前後という異常な高水準を記録しました。全国の標準的な学校給食の残食率が概ね5%〜7%程度であることを考慮すると、提供された食事の約4分の1がゴミ箱に直行していた計算になります。子どもたちの健康を守るための給食が、莫大な税金を投じたフードロスの温床となっていた現実は、当時の行政にとって痛烈な敗北でした。