2022年12月に閣議決定された「防衛力整備計画」は、自衛隊の航空戦力ドクトリンに戦後最大の地殻変動をもたらしました。その象徴たる出来事が、陸上自衛隊AH-1SおよびAH-64Dアパッチ・ロングボウといった戦闘ヘリコプターの用途廃止方針です。かつて最大90機近くが調達され、北原の防衛から列島各地の即応体制を担った主力対戦車ヘリコプターが、新規調達を停止するのみならず、全機退役へと舵を切られた事実は防衛関係者に強い衝撃を与えました。
この激変を決定づけた最大の要因は、現代戦における「有人攻撃ヘリの生残性の著しい低下」にあります。防衛省関係者への取材によると、決定的な契機となったのは2022年以降のロシア・ウクライナ戦争の戦訓でした。低空を侵攻するロシア軍の攻撃ヘリが、歩兵の携行型地対空ミサイル(MANPADS)や即急配備された防空網によって次々と撃墜される映像は、防衛政策担当者の固定観念を根底から覆しました。
「低空から忍び寄り、物陰からミサイルを放つ」というAH-1コブラが築き上げた戦術は、現代の高度な監視レーダーや安価な自爆型ドローンが飛び交う空域では通用しにくくなっています。巨額の維持改修費を投じて老朽化した機体を延命させるより、搭乗員の人的損耗リスクをゼロに抑えられる無人アセットへ資源を集中投下する――これがAH-1退役理由の冷徹な軍事合理的判断でした。