目白の志むらを語るうえで外せないのが、皿の上に垂直に近い角度で盛り付けられる「断崖絶壁」の異名をとるかき氷です。一般的なかき氷がこんもりとしたドーム状であるのに対し、志むらのかき氷は削り手の緻密な手の感覚によって氷の壁が築かれ、その片面へ贅沢に自家製蜜が掛けられます。氷の重みとシロップの水分バランスが極限まで計算されているからこそ成立する造形であり、提供された瞬間に漂う存在感は他店のかき氷と一線を画します。
一番人気を誇る「生いちご」かき氷は、果肉感をしっかり残した甘酸っぱい果実シロップが、氷の白肌を覆い尽くすようにたっぷりとかけられています。スプーンを入れると、外側は果実感に満ちた濃厚な口当たりでありながら、内側の削り氷はふんわりと軽やかで、口内で瞬時に溶け去ります。老舗和菓子屋ならではの上品な白餡や練乳トッピングとの相性も抜群で、ビジュアルの迫力だけに依存しない、和菓子づくりの知見が凝縮された逸品です。
もう一つの柱である「九十九餅(つくももち)」は、全卵を練り込んだやわらかな求肥(ぎゅうひ)に、丁寧に蜜煮された虎豆(とらまめ)を配し、香り高い極上のきな粉を惜しみなくまぶした銘菓です。口に運んだ瞬間に広がる求肥のとろけるような食感と、虎豆の上品な甘み、そして芳ばしいきな粉の香りは、80余年の歳月を経ても色褪せない完成度を誇ります。この二枚看板が共存していることこそ、志むらが幅広い世代から絶大な支持を集め続ける最大の理由です。