カイロの夜空を切り裂き、漆黒の闇から落下してきた巨大な鉄の塊。読者の度肝を抜いた「ロードローラー投擲」は、単なる奇抜な演出ではありませんでした。作中の時系列と能力の力関係を克明に読み解くと、百年の眠りから覚醒した帝王DIOの極めて合理的かつ狡猾な勝算が浮かび上がってきます。
直前の戦闘で、DIOは承太郎の死んだふり作戦に嵌まり、頭部をスタープラチナに砕かれる致命傷を負っていました。ジョセフ・ジョースターの血を吸って肉体が完全になじみ、静止できる時間が「9秒」まで延びたとはいえ、DIOは承太郎の拳の破壊力と一瞬の反撃能力に最大の警戒を払っていたのです。もし再び接近戦でラッシュの撃ち合いに持ち込めば、わずかなズレで反撃を許しかねない。そこでDIOが導き出した解が、「スタープラチナの拳で殴り返せないほど巨大で重い質量で押し潰す」という物理的圧殺でした。
一般的なタンデム式やマカダム式のロードローラーの重量は、およそ10トンから15トン前後に達します。いかに超人的なパワーを誇るスタープラチナといえども、頭上から落下してくる10トン以上の鉄塊を支えながら、同時に上方へ有効打を放つことは構造上不可能です。さらにDIOは自らのスタンド「ザ・ワールド」によるラッシュを上から叩き込み、重力とパワーを二重に加算させました。承太郎に脱出の隙を与えず、確実にミンチへと変えるための冷徹な戦術兵器、それがあの重機だったのです。
では、DIOは一体どこからあの巨大な重機を調達してきたのでしょうか。ファンの間では「時を止めたわずか数秒でどこから持ってきたのか」という疑問が長年語り草になっています。DIOの停止時間は覚醒後で最長9秒間。そのうち、承太郎を橋の上に吹き飛ばし、姿を消してから再び姿を現すまでのインターバルはわずか数秒です。当時のカイロ中心部では道路舗装工事やインフラ整備が夜間に行われており、DIOは驚異的な跳躍力と怪力を用い、数百メートル圏内の工事現場からロードローラーを強奪して滑空するように運んできたと推測されます。「探して、持ち上げ、上空まで運ぶ」という一連の動作をわずか数秒の静止時間内で完遂した事実こそ、覚醒したDIOの身体スペックが頂点に達していた動かぬ証拠です。