善法寺伊作という忍たまの精神的深度を語るうえで欠かせないのが、プロの暗殺・諜報集団であるタソガレドキ忍軍の組頭、雑渡昆奈門との特異な関係性です。
両者の邂逅は原作第37巻(アニメ第19期など)で描かれた過酷な戦場で起きました。全身に大火傷を負い、包帯姿で恐れられる歴戦の忍・雑渡昆奈門が重傷を負って倒れていた際、伊作は周囲の制止を断固として拒絶し、敵味方関係なく手当を施しました。「忍者は人を倒すのが仕事だが、自分は怪我人を放っておけない」という純粋な医療倫理に基づいたこの処置は、裏切りと冷酷さが支配する忍びの世界に生きる雑渡の価値観を根本から揺さぶることになります。
この一件以来、雑渡昆奈門は忍術学園を敵視する立場でありながら、善法寺伊作に対してのみ絶対的な敬意と恩義を払い続けています。学園の合戦場演習や各種抗争においても、タソガレドキ忍軍は「保健委員には手を出すな」「伊作の手当の邪魔をするな」という暗黙の厳命を共有しており、伊作が窮地に陥った際には雑渡が影から助太刀に入る局面すら存在します。冷徹なプロの忍者が、一介の忍者候補生の純粋さに絆され、損得勘定を捨てて庇護に回るという関係性は、作品屈指のエモーショナルなドラマとしてファンを魅了し続けています。