長年親しまれた有力店舗がなぜロードサイドから姿を消したのか。取材班が小売流通業界の構造変化とアウトドア市場の推移を分析した結果、そこには必然とも言える3つの構造的転換が浮かび上がってきました。
1. ロードサイド型路面店から「新幹線ターミナルSC」への集客シフト
最大の要因は、北陸新幹線の延伸・定着に伴う金沢駅周辺の圧倒的な商業地化です。かつての金沢は自家用車での移動が前提であり、国道8号線や西インター周辺のロードサイドが物販の主戦場でした。しかし駅前開発の急速な進展により、若年層や県外からの遠征登山者、インバウンド観光客の流動量は駅周辺へ一極集中。好日山荘は限られた経営資源を最大化するため、車客頼みの郊外型から、圧倒的な歩行者トラフィックを誇る「金沢フォーラス」への集約を決断しました。
2. ギアのEC化に伴うショールーミング化と固定費の圧迫
日本国内におけるアウトドア用品のEC化率は、2020年以降のパンデミック期を経て30%台半ばまで急伸しました。郊外の大型独立店舗は、広大な売り場と駐車場を維持するための賃料・光熱費が重くのしかかります。店頭で実物を見てネットで安値を探す「ショールーミング」が一般化するなか、坪あたりの収益効率が極端に落ちていた郊外路面店を維持し続けることは、経営戦略上極めてリスキーな選択肢となっていたのです。
3. 「物販型」から「体験・フィッティング特化型」へのブランド再編
近年、好日山荘は単に商品を並べて売るディスカウント型の販売モデルから脱却し、有資格スタッフによる登山靴フィッティングや登山学校・ツアーデスクを兼ね備えた「コト消費」中心のプレミアム業態へと舵を切っています。こうした高付加価値サービスは、感度の高い顧客が集まる駅前商業施設との親和性が極めて高く、店舗の役割そのものが変化したことも西インター大通り店からの撤退を後押ししました。