インターネット上で長年にわたり拡散されてきたのが、いわゆる「トトロ死神説」と、それに付随する「風の通り道=あの世へ続く霊道」というダークな都市伝説です。SNSや匿名掲示板では、「サツキとメイは後半すでに溺死していた」「風の通り道の歌詞は死者が三途の川を渡る描写である」といったショッキングな言説が、まことしやかに語られてきました。
しかし、こうした言説は完全に事実無根の創作であることが公式に証明されています。スタジオジブリは2007年5月の公式ブログ記事において、ネット上の噂に対して以下のように明言しています。
「トトロが死神だとか、メイちゃんは死んでいるという設定は全くありません。最近、トトロについての変な噂がインターネットを通じて広まっているようですが、全く事実ではありません。(中略)映画の最後の場面でサツキとメイに影がないのは、作画上の演出として影をつける必要がないと判断したためであり、死んでいるからではありません。」
ジャーナリズムの観点からこの現象を分析すると、人間には「純真無垢な美しい物語の裏に、恐ろしい真実が隠されているに違いない」と思い込みたがる心理的バイアス(クレムリン的深読み欲求)が存在します。「風の通り道」という神秘的な言葉の響きや、マイナー調を基調とした美しいメロディの哀愁が、こうした悪意ある都市伝説の格好の標的となってしまったに過ぎません。宮崎監督が描いたのは死者の世界ではなく、むしろ瑞々しい生命の躍動と土の力そのものです。